最低賃金が12月1日から1,031円に改定|建設業の社長・経理担当者が確認すべきポイント

2025年12月1日から、長崎県の地域別最低賃金が 時給1,031円 に引き上げられます。現行953円から78円の引き上げとなり、過去最大の改定幅です。

このニュースを聞いて、「うちの会社も給与の見直しが必要か?」と不安に感じている建設業の経営者や経理担当者の方も多いのではないでしょうか。特に、日給制や月給制を組み合わせている給与体系の会社では、どのように最低賃金を確認したらよいか迷いやすいポイントです。

本記事では、建設業によくある給与形態を例に、最低賃金をクリアしているかどうかの計算方法をわかりやすく解説します。

1. 最低賃金の基本ルールを押さえよう

最低賃金は「時間あたりの金額」で決まっています。
そのため、日給制や月給制の場合も、必ず1時間あたりの金額に換算してチェックしなければなりません。

また、最低賃金の計算には次のようなルールがあります。

  • 含めることができる賃金:基本給、役付手当、職務手当、住宅手当など

  • 含めない賃金:時間外手当(残業代)、休日手当、深夜手当、通勤手当、精勤手当、家族手当、住宅手当、賞与など

つまり、最低賃金のチェックは「基本給や役付手当など、毎月必ず支給される手当」で計算するという点がポイントです。

2. 日給制の場合の確認方法

建設業では「日給制」を採用している会社も少なくありません。
その場合は、日給を所定労働時間で割って時給換算します。

例1:日給12,000円、所定労働時間8時間の場合

12,000円 ÷ 8時間 = 1,500円/時間

この場合、最低賃金(1,031円)を十分に上回っているため問題ありません。

例2:日給8,000円、所定労働時間8時間の場合

8,000円 ÷ 8時間 = 1,000円/時間

この場合、最低賃金(1,031円)を下回るため、賃金の見直しが必要になります。

3. 日給+月額手当がある場合の確認方法

「日給制の基本給に加えて、役付手当を月額で支給している」というケースもよくあります。
その場合は、月給部分を月間労働時間で割って時給換算し、日給分と合算して確認します。

例3:日給9,000円(8時間労働)、役付手当30,000円/月

  • 日給部分:9,000円 ÷ 8時間 = 1,125円/時間

  • 役付手当部分:30,000円 ÷ 173.8時間(1か月平均労働時間) ≒ 173円/時間

  • 合計:1,125円 + 173円 = 1,298円/時間

この場合、最低賃金(1,031円)をクリアしています。

注意点

役付手当が「実際には裁量的に支給される手当(能力給や成果給に近いもの)」と判断される場合、最低賃金の計算に含められない可能性があります。必ず労働条件通知書や賃金規程を確認しましょう。

4. 計算のステップを整理

自社の給与が最低賃金をクリアしているかを確認するには、以下のステップを踏むとスムーズです。

  1. 所定労働時間を確認する(1日何時間、1か月平均何時間か)

  2. 賃金の内訳を整理する(基本給・役付手当・職務手当など)

  3. 「最低賃金に含められる手当」だけを抽出する

  4. 時間あたりに換算する(日給は1日の労働時間で、月給は月平均労働時間で割る)

  5. 合算した金額が1,031円以上かどうかチェックする

5. 見直しが必要な場合の対応

もし計算した結果、最低賃金を下回っている場合は、賃金規程や給与体系の見直しが必要です。
対応の方法としては、以下のようなものがあります。

  • 日給額を引き上げる

  • 役付手当を増額する

  • 基本給を月給制に変更し、最低賃金に適合するよう調整する

ただし、最低賃金は「全員一律」で守らなければならないため、一部の従業員だけが下回る場合でも、必ず改善が必要です。

6. まとめ

  • 2025年12月1日から、長崎県の最低賃金は 時給1,031円 に改定

  • 日給・月給制の給与も 必ず時間換算してチェックする必要がある

  • 最低賃金に含められるのは「毎月必ず支給される手当」のみ

  • 下回っている場合は、基本給や手当の見直しが必要

7.社労士からのアドバイス

最低賃金の改定は、単に「時給が上がる」だけでなく、給与体系や就業規則の整合性を見直す良いきっかけになります。

特に建設業では、

  • 日給制や現場手当などの複雑な賃金体系

  • 天候や工期による労働時間の変動

  • ベテラン社員と若手社員の賃金バランス

といった課題が絡み合い、最低賃金のチェックが難しくなるケースが多く見られます。

「計算がややこしい」「どの手当を含めていいのかわからない」と感じたときに自己判断で進めると、思わぬ労務トラブルにつながることもあります。

👉 そのため、最低賃金改定のたびに一度は専門家に給与計算を点検してもらうことを強くおすすめします。

給与をしっかり整備することで、従業員の安心感が増し、定着率の向上にもつながります。

「自社の給与体系で大丈夫だろうか?」と不安を感じた際は、どうぞお気軽にご相談ください。

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