社会保険料の決定と改定ルールを社労士が解説|月額変更の注意点とは?

社会保険料の決定・改定ルールを正しく理解していますか?

算定基礎届が終わって一息ついている労務担当者の方々も多いのではないでしょうか。社労士事務所では、労働保険の年度更新・社会保険料の算定基礎届が重なるこの時期が一番の繁忙期。給与計算を自社で行われているお客様の賃金台帳を見るのもこの時期となりますが、社会保険料のズレや漏れが発見されることが多々あります。日々の給与計算において、「社会保険料の正確な控除」は非常に重要な業務の一つです。
ところが、社会保険料の決定や改定のルールは意外と複雑で、手続き漏れや誤った処理がトラブルの原因になることもしばしば。今回は、社会保険料の決定・改定の基本ルールをわかりやすく解説いたします。

社会保険料の決定方法とは?

社会保険料(健康保険・厚生年金)は、「標準報酬月額」に基づいて計算されます。この標準報酬月額とは、基本給だけでなく、通勤手当や残業手当などを含めた毎月の総支給額を、保険料額表にあてはめて等級を決定したものです。そこに保険料率を掛け合わせた金額が、実際に給与から控除される社会保険料となります。


保険料が決まる3つのタイミング

  1. 入社時(入社時決定)
     入社時には、見込みの給与額をもとに標準報酬月額を決定します。見込まれる時間外手当や回数手当の計上も忘れずに!

  2. 定時決定(算定基礎届)
     毎年4月~6月に支払われた給与の平均額を基に、9月から翌年8月までの保険料が決定されます。結果として、等級(標準報酬月額)の変更がなくても、原則として社会保険加入者の全ての方が対象です。

  3. 随時改定(月額変更)
     昇給や手当の追加など、固定的な賃金が大きく変動した場合には、次の定時決定を待たずに保険料の改定手続きが必要です。この際、「月額変更届」の提出が求められます。


「月額変更届」のポイント

随時改定、いわゆる「月額変更」は以下の条件をすべて満たす場合に必要となります。

 ➀ 固定的賃金に変更があった(例:基本給の昇給、通勤手当の変更)←契機の月です

 ➁ その契機の月をスタートとし、3カ月間の平均賃金が、従前の標準報酬月額と比べて2等級以上の差が生じた

たとえば、時給制のパートタイマーの方で時給単価が上がった場合や、役職手当が新たに支給されるようになった場合なども「固定的賃金の変動」に該当します。

実務のポイントは、★契機の月を見逃さないこと! ★3か月間の平均は時間外手当などの変動的賃金も含めた総支給額で平均すること! になります。


よくある勘違いと注意点

  • 残業代が増えたからといって、必ずしも月額変更が必要なわけではありません。
     残業代は「変動的賃金」に分類されるため、これのみでの増減は対象外となることがあります。

  • 賃金が増えたのに、2等級以上の変動がなかった場合は対象外です。
     3カ月の平均額がそこまで大きく変わらなかった場合は、月額変更の要件を満たしません。

  • 月額変更の提出漏れが最も多い指摘項目
     年金事務所の調査では、「月額変更の手続き漏れ」が最も多く見られるミスの一つです。うっかり忘れてしまうと、従業員の保険料が正しく徴収されず、将来の年金受給にも影響を及ぼす可能性があります。


トラブル防止は、ルールをしっかりと把握することから!

社会保険料の決定・改定は、独自のルール、仕組みで運用されています。自己判断は厳禁、しっかりとルールに沿った判断と手続きが必要となります。万が一、不明な点や判断に迷う場合は、社労士へ相談することをおすすめします。
弊社でも随時ご相談を受け付けておりますので、詳しくはこちらの公式サイトをご覧ください。

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