「収入の壁」あらためて整理しましょう
こんにちは!Minerva社労士法人です。グループである会計事務所では確定申告真っ只中!事務所の中はいつも以上にバタバタとしています。
昨年の衆議院選挙あたりから、これまで以上に注目浴びている「収入の壁」。お客様からもたくさん質問いただくのですが、聞いてみると、意外と皆さん「税法」の壁と「社会保険」の壁をごちゃ混ぜにしている方が多い。似ているようで違うんですね、勿論、国の政策もです。確定申告シーズンの今、税法と社会保険の違いをあらためて抑えておいて、今後のニュースに注目しましょう!
「収入の壁」を税法と社会保険の観点から整理
「収入の壁」は、働く人が一定の収入を超えた際に税負担や社会保険料が増加し、手取り額が減少する現象を指します。この問題を税法と社会保険の観点から整理すると以下のようになります。
1. 税法上の「収入の壁」
103万円の壁(配偶者控除)
年収103万円(給与収入103万円)の壁とは、パートやアルバイトで働いている配偶者に所得税がかかるかどうかの線引きを表しています。また、配偶者の年収が103万円以下の場合、配偶者控除が適用され、納税者(主に夫)が最大38万円の控除を受けられます。※現在、国はこの103万円を123万円に引き上げることを令和7年度税制改正大綱の盛り込んでいます。150万円の壁(配偶者特別控除)
配偶者控除が減額される103万円を超えた場合でも、年収150万円までは配偶者特別控除が最大限適用されます。ただし、それ以上の収入では控除額が減少し、配偶者特別控除がなくなる場合もあります。
2. 社会保険上の「収入の壁」
106万円の壁
2016年の改正で一部の短時間労働者が社会保険に加入する基準が追加されました。企業規模が一定以上(従業員51人以上)の場合、年収が106万円以上で、勤務日数や時間が正社員の4分の3以上であれば、社会保険に加入する義務があります。 ※ 厚生労働省は2026年10月から106万円の壁を撤廃する方針です。
130万円の壁(健康保険・厚生年金)
年収130万円以上の場合、配偶者の扶養から外れ、自身で社会保険に加入する必要があります。この壁が最も広く知られており、手取り額への影響が大きいとされています。106万円の壁とは異なり、扶養者の勤務先の規模に関係なく適用されます。 ※ 厚生労働省は2035年10月からパートら短時間労働者の厚生年金加入を拡大するため企業規模要件を撤廃する方針です。
ポイントと課題
- 税法では、段階的な控除制度が整備されつつあるものの、収入が増えるほど控除が減る仕組みが「働き損」と感じられる要因となっています。
- 社会保険では、加入基準を超えた際の保険料負担が、短期的には手取り額を減らすため、特にパート労働者が収入調整を選択しがちです。
これからどうなる?
ニュースでは「収入の壁」として語られることが多いですが、実は税法と社会保険では方針は逆のように思います。税法では収入の壁(額)をより高い方向へ、社会保険では壁をできるだけ低く、無くす方向へ向かっています。ここを抑えてニュースを見ると、より今の日本が見えてきますよ!